DIGIMON BEATBREAK 第7話「ニリンソウ」感想
脚本:佐藤寿昭 演出:高戸谷一歩 総作画監督:仲條久美 作画監督:西村あずさ、有我洋美、洪範〇、諸葛子敬 作画監督補佐:谷津美弥子 美術:神綾香 制作進行:鈴木百合、吉野翔馬 <2025.11.16. 放映>
キョウがメインの今回、アイキャッチがキョウとムラサメモン編に。サブタイトルは、キョウの持つシェルターの名であった。ニリンソウの花に囲まれたシェルター、二つ寄り添う花のように人間とデジモンの「共生」を象徴する言葉でもあった。今回をひとことで言うと「キョウ、水くさい!」「ブラックガオガモンの葛藤」。吉村が護送したデジモンがどうなるのか、謎は一つ解けた。あとOPの5人についても一部明かされた。正直ほっとした。いくら視聴者の年齢がやや高めに設定とは言え、謎や情報量が多い本作に、個人的に少々疲れてきたところであった。ネットでスタッフ・キャストからの事前事後のコメントも多く、フォローしきれずにいる。謎解き考察のお好きなファンには物足りないのかもしれぬが、高度の考察ができないと楽しめない作品であってほしくない。キッズアニメを機にデジモンファンになった者としては。普通に見ていっても理解でき楽しめる作品であってほしい。
●ニリンソウ:3~5月に白い花を咲かせるキンポウゲ科の多年草で、主に東アジアの湿った林に自生する。多くは1本の茎から特徴的に花が2輪ずつ寄り添って咲く姿が「二輪草」の和名の由来である。1輪や3輪で咲くことも少なくないが。有毒植物が多いキンポウゲ科の中で、食べられる数少ない種の一つ(無毒化に煮沸が必要)で、春の若葉や花は山菜として、根は漢方薬として利用される。同じ種のイチリンソウ、サンリンソウは食用にならず、ニリンソウとよく似たトリカブトは猛毒である。今回、毒はなく食用にできることは特にストーリーと関係はなかった。
●五行思想:古代中国に端を発する自然哲学の思想。万物は火(か)・水(すい)・木(もく)・金(ごん)・土(ど)の5種類の元素からなるという説である。五行というこの五つの気が、それぞれ性質や方向性、変化の性格を持つとされる。西洋の四大元素(地・水・火・風)と類似するようだが、五行は静的な構成ではなく、相互に変化し循環し続ける「動的な関係性」に重きを置く、はるかに複雑で有機的な体系といえるという。自然界・人体・方位・季節・色などあらゆる事象に分類的に適用される。
さて通称「五行星」なるそうそうたるデジモン使いのクリーナーはOPに出ている5人と思われる。ネットではそのパートナーデジモンを特定するファンもいて。「大猿」はそのうちの1体と思われる。そうなると、アスカのサポタマは奪わねばならない相当ヤバい情報が入っているよう。アスカは何を知り、トモロウをキョウに預けたのかますます気になるところ。
●トモロウ:「アニキ』でなく「兄さん」なトモロウが7才も年上のリーダーを呼び捨てにしたのには驚いた。ただ、キョウがそうしろと言ったのかも。今回もメインをキョウに譲った形。
前回、舌を不用意に使うなと言っていたが、今回は自分の腕をゲッコーモンに差し出して利用させており、関係の深まりを感じる。
ブラックガオガモンに襲われる災難。けど、一人ぼっちと知って共感を覚えたか「お前、本当は人やデジモンを襲いたくないんだろ?」と身を張って。その言葉に、泣く泣く経緯を語るブラックガオガモン…矛盾する言動の訳はそれであった。トモロウに先んじてブラックガオガモンに近づいたのはキョウだった。
家事能力はそれなりにあると推測した。ところが、アスカに反して、トモロウは料理はてんで不得意と判明。ゆで卵の作り方も卵の殻剥きさえ知らないという筋金入りの料理音痴が作った玉子サンド、味は笑。料理を教えてくれとキョウに願い出る。ファミリーとして少しでも役に立ちたくて。玉子サンドがちゃんとマズそうに描かれてる、笑。照れながら決意表明「代わりに俺たちもここを手伝うから。夢、あるんだろ?」。
●ゲッコーモン:今回も進化せず。デジモンの進化という旨味を使わずしてここまでファンを引っ張ってこられる展開はある意味すごいこと。
嗅覚が敏感だが、味覚もなめた人物のe-パルスの味を特定できるほどに鋭いと判明。それにしても、キョウが寝てる間に味見とはオイオイ大胆で気持ち悪い。じゃあレーナとマコトのも?
トモロウの叩くビートが冴えないのもその理由も、ゲッコーモンはわかっていた「家族に隠し事されてすねてるだけだってナ」。「俺は自分がどうしたいかすらよくわかんねぇ。挙句デジモンにもビビられて…俺は」。そこでブラックガオガモンが荒れた経緯を見せに行くクーガモン。「あいつはエゴだなんだとごまかしていたが、あの場所にはキョウの夢が託されている」とさとす。キョウの夢のためにできることとは。
●キョウ:2週間に一度くらいの不在を繰り返していた理由が判明「まあ、あれだ…ようこそ、シェルター・ニリンソウへ」。冷徹な表情から一転笑顔へ。デジモンをデリートするのが忍びなく、保護省に渡せばデリートされるであろうデジモンの幼年期をかくまうシェルターを隠し持っていた。「これは、俺のエゴだ。すまない、お前たちには迷惑かけないよ」。でも、ふらふらじゃん、心配だよ。サポタマのない幼年期のe-パルスの補填を一人で担ってきたから無理もない。日当たりが良いけど、ニリンソウ大丈夫?
「消えなくていい、消える必要なんかない。お前たちには何の罪もないんだ。e-パルスが食いたいなら、俺のを食えばいい。だから、消えるなんて言わないでほしい。デジモンと人間、俺たちが共に暮らせる未来を、必ず作るから…!」罪はないと言っても、実際登山客の被害者が出ているのに、劇甘な対応。どこまでもデジモン側に寄り添おうとするキョウ。「なぜそこまでして」、その夢を抱くに至った経緯が詳しく語られるのを待とう。
「誰にだって、やり直すチャンスはあるよ」。普遍性のあるいい言葉。それはもしかしてキョウ自身が「やり直し」体験済みを暗示するのかも。ひどく冷酷なクリーナーだったとか。
左腕に黄色の腕飾り(ミサンガ?だとしたら誰かと何かを約束している?)をしている理由はのちに明かされるだろう。左腕を顔にかざす癖は、表情(本心)を隠すため?
●クーガモン~ムラサメモン:クーガモンでいる時間が長いのは単に体力温存だけでなく、キョウの負担を考えての選択か。ムラサメモンの必殺技「豪ノ斬・叢時雨(ごうのざん・むらしぐれ)」、「柔ノ斬・月時雨(じゅうのざん・つきしぐれ)」、「終ノ斬・哭雨(ついのざん・こくう)」のうち、今回は中者である。前者は上段の構えで放つ一刀両断の斬撃。中者は、下段の構えであらゆる攻撃をはじき返す柔の剣。後者は右肩に刀を担いだ状態で敵へと跳躍し、空中で空中で体を縦に回転し剣撃を高めた必殺の剣。
水を差し入れ、「ファミリーだというなら、少しは頼ってやれ。あいつらはそんなにヤワじゃない」。キョウに似て言葉少なで不器用だが、しっかりと温かいフォロー。
●レーナ:「そういうの要らないから!」「だからって、キョウ一人でそんなことして、あたしたちが心配しないとでも思ったの?!」と強い口調、ごもっとも。黒沢さんの演技も素晴らしい。自分からファミリーを名乗りながら、本当に水くさいキョウ。しかし事情が分かれば、こちとら万全の協力体制へ。決意するマコトとレーナ、ニリンソウのショットが挟まれる。
●マコト:白地に黄色のアクセントのパジャマ姿を拝めてちょい萌え。レンジを要修理と判断し、またも家計の心配を。五行星について解説する役目。
●キロプモン:凍りかけの登山客の加害者を短時間で分析し特定、お手柄。
●マキ:「カスミノシティ」は、官庁街の霞が関のもじりだろうか?マキの情報によると、カスミノシティのシャングリラエッグで一斉摘発があった。五行星が高額の賞金首を一掃したので、当面、グローイングドーンに紹介できる依頼がなくなった。吉村に「今日は山じゃなかったの?」と言っているが、「山」が何なのか事情を知ってるっぽい。
●吉村:自称ただの飲んだくれ笑。シェルターを隠す結界のような装置を作ったご本人。本当に一体何者?元サポタマの開発者とかだったりして~。今までシェルターの唯一の理解者(共謀者)であったが、今回ばれてしまう原因を作った人。
●ブラックガオガモン:ガオモンの体格が大きくなり、グローブで保護していた爪がしっかり成長した獣型の成熟期。成長の過程でブラックデジトロンが体内に混入し黒い姿に。通常のガオガモンより頑丈だが、軽快なスピードは損なわれた。必殺技は、敵に見えない速さで接近して放つ「ダッシュダブルクロー」、強靭な歯で噛みつく「ガオガハウンド」、口から強力な風を放つ「スパイラルブロー」。原型は犬だが、クマより大きい。昨今の現実のクマ被害が頭をかすめた。
その実態はサポ主に放置された被ネグレクトデジモンであった。サポ主の人柄が何かを機に変わってしまったのか、悪事を強要され拒否すると捨てられた。繊細な性格であろう、登山客を襲った際のフラッシュバックに苦しむ神経を持ち、本能たる生き続けたい飢えと、理性たる人間を襲いたくない良心との激しい葛藤のはざまで振り回されていた「食いたくねぇ、消えたくねぇ!」。最後には自らe-パルスを消費して消えようとさえした、根は極めて善良なデジモン。キョウの献身のおかげで飢えをしのぎ、幼年期ボタモンとなってシェルターへ仲間入りした。
CVは鶴岡聡さん。リマックスに所属する中堅の声優、舞台俳優。フロンティアでキャンドモン、カラツキヌメモン、セイバーズでドリモゲモン、フォースブイドラモン他多数で出られている。
●プニモン:ハイエモンピアスが退化した個体。かつてデリートを命じた「目つきの悪い」トモロウにおびえていたが、気の持ちように変化のあったトモロウになつく様子もあとで見られた。CVは岸尾だいすけさん。
●幼年期たち:数も種類もたくさんの幼年期たち。シェルターの幼年期はキョウになついていた。賞金首になった事件の凶悪さは見られないほどにみな落ち着いて、かわいらしい。幼年期に退化すると悪かった性格もデータが一度白紙に戻るのか、それともキョウのe-パルスを吸い続けてキョウの温厚な性格の影響を受けるのか。キョウ「お前だけまだだったな」ということは、この数の幼年期をすべて個体識別できているということ、その記憶力と愛情がすごい。
次回予告:次回のサブタイトルは「消エル教室」。学校の怪談?黒い鉄球をくらうゲッコーモン。暗い部屋に浮かぶデジ文字と眼鏡の少年。頬をつぶされるゲッコーモン。またもピンチのヒトミ。予告の動画が毎回手が込んでおり、全部はフォローし切れずにいる。ファンサービスであってもこの老体、情報過多で疲れてしまう。
2025.11.18. 記