DIGIMON BEATBREAK 第10話「本当の友達」感想
脚本:會川昇 演出:嶋谷将(しまやたすく) 総作画監督:小島隆寛 作画監督:洪範〇、中野彰子、川村敦子、近藤瑠衣 美術:神綾香 制作進行:三枝勇太 <2025.12.7.放映>
9話の続編だからして、會川氏の脚本で続投となった。嶋谷氏は、ワンピなどで絵コンテや監督?を務められた方なよう。マコトへの愛着と嫉妬を持ち合わせて、キロプモンを無理やり奪ったハルコ。しかしキロプモンのパートナーという揺るぎなさをマコトに見せつけられ、結果キロプモンはマコトのもとへ。父に見捨てられ、自分をそもそも肯定できないハルコはパニック状態となる。それを救おうとしたのは他でもない、邪険に扱われていたパートナー・シェイドモンの献身的な叫びであった。「本当の友達」とは、マコトとキロプモン、ハルコとシェイドモンを指すのであろう。
●トモロウ:声をかけるレーナに「今は一人にさせてやろう」と気の利いたことを言うようになって、あらまあ!チームになじんでます。
●ゲッコーモン:銃を向けられたキョウのところへ突っ込み、舌で素早く銃を手放させる快挙。ものすごい速さは、ゲッコーモンの良い持ち味。あとはシェイドモンに操られ、脇役に回っている。
●マコト:ハルコが「久遠寺コウギョウ」と言ってるけど、「工業」「興業」「鉱業」のどれ?「鉱業」はマイナーだし「興業」は反社会的っぽいし、ハイエンドブロックだから「工業」が妥当か。
キロプモンを奪われて、ひどく放心状態。追おうとはしなかった。それだけショックだったし、相棒が不在でできることは少なかったのもあるだろう。街をさまよっていたが、キロプモンの悲鳴を聞いて、動き出す。
「醜くたって、弱くたっていいんだ」「キロプモンは僕の合わせ鏡、僕の弱さも醜さも映してしまう。でも、僕はそんなキロプモンが大好きなんだ」自身を全面肯定してくれるマコトの宣言に、キロプモンは自ら洗脳を突破する。頭のいい、性格も善良なわずか10才、よく言った!うろ覚えの知り合いにも友人として誠意を尽くす人格者。「二人なら、もっと強くなれる!」。
キロプモンを奪還するためにサニーのすねを蹴るという、成人男性への精一杯の暴力。よくやった、けれど右頬を張り飛ばされてしまい痛々しい。ひょっとしてサニーは左利きか両利き?ハルコの母のけがも右頬であった。
「確かにあそこには何でもあるけど、デジモンだけはいない。だから僕は、ここが好きです!」理想郷と呼ばれても、かけがえのないものはそこにはないならば。王子様と呼ばれる境遇からグローイングドーンに加わるまでの詳しい経緯は、またもお預け。
●キロプモン:操られて、封じられていた必殺技「コンデンスエコー」を味方に放った。打ちのめされるゲッコーモンとプリスティモン。バナナの皮や空き缶が描かれているのは、ゴミも一緒に飛ばされたっていうこと?ハルコに「デジモンは自分の心の一部なんかじゃない。単なるモンスター。私のe-パルスで動くただのオモチャ」と嘲笑されて。だが操られていながら、本能的にマコトのe-パルスを求め、ハルコのそれを二度と受け付けなかった。マコトの呼びかけが響いて、洗脳を自ら解いた。守りたい、強くなりたい。
●ナイトキロプモン:マコトとの互いを守りたい、強くなりたいという強い想いが、ついに進化へと導いた。ナイトの由来は騎士ではなく夜とのこと。獣人型の成熟期。ボクというからにはなるほどシュッとした男系デジモン。幼い声の小動物から精悍なメカメカした人型への進化のギャップは、パタモンのエンジェモンへの進化を想起させる。演じた久野氏によると、「声はあまり変えずに、中身が成長した感じで」と指示を受けたという。ネットでは、コウモリがモチーフのヒーローとしてバットマンを連想させるとの声が。私は洋画に詳しくないので、何とも言えない。必殺技の「メズマバースト」でゲッコーモンとウルヴァモンの洗脳を解いた。さらに「ジャイアントラング」でシェイドモンを打ちのめしハルコとの融合を解いた。
●キョウ:デジモンをモノ扱いした上に売り飛ばすなんて。ずっとお怒りモードだった。エッグへも強行突破。ファミリーのこととなるとタガが外れて、相応の理由があっても火野やサニーに暴力を振るうのは、実をいうと私は怖かった。こんなキョウ様、見たくな~い…。レーナは口笛吹いて称賛してたけど。今回の案件を任せたことを反省。天才とはいえ、そんなケースもあるんだ。
●レーナ:「大丈夫?マコっちゃん」て、大丈夫なわけないじゃんとツッコみたくなります。そこは言葉足らずのたかが16才、フォローのしようもなくて。
●クーガモン:いつの間にムラサメモンに進化したんでしょう;
●ハルコ:ACE(小児期逆境体験)の被害当事者(おそらく父親もそうだったのではないか)。貧困、両親の離別、父からの身体的・精神的虐待。ただ、かわいらしい良い服装だから、その点は恵まれていた。ただの父の上昇志向の表れかもしれないが。父親からの愛情を渇望して、悪事に手を染める。心を操ってでも自分に関心を向けさせたい、愛情の欠乏と孤独。ハルコは自分の醜さ、弱さを実は自覚していたが認めたくなかった。だってそんなの父の求める「理想の自分」じゃないから。その父に捨てられ、醜いパートナーデジモンがいて、強い自己否定は破滅を求めた「もう嫌だよ、消えろ、何もかも、みんな消えろー!」「こんな私なんて全部消えたほうがいいんだ!」。破滅、すなわち希死念慮、周囲を巻き込むなら無理心中とも言える。
マコトへの執着は、名もない家の出なのに平等に接してくれたことへの喜び(父から受けることのなかった無償の愛情)もあるが、マコトの生まれながらに恵まれた境遇への激しい嫉妬もあったろう。マコトはハルコをうろ覚えであったが、ハルコにとっては、王子様でありキロプモンにその匂いを見つけて抱きしめるほどに愛着があった。だからオモチャと称したキロプモンに次第に入れ込んでいく。
最後に、母のもとを訪ねる、と。「今は一人じゃないから」、と。夕暮れが映すハルコの影とシェイドモン、いいシーン。その夕日のように二人に輝かしい未来が待っていますように。歪んで育てられ、最後には化け物呼ばわりされて捨てられ、一時は心がぐちゃぐちゃになったハルコが自身とパートナーデジモンを受け入れて、ハッピーエンドでよかった。
●シェイドモン:可哀想なほどにハルコからの冷遇に耐えていたのは、パートナーとして大切に思っていたから。いつかハルコが愛を与えてくれるのを信じて。ハルコの命令通り彼女の影に入ると、二人は「合体」し、翼のある醜い黒い姿に。それでシェイドモンはハルコの孤独を体感したのでは。破滅を望むハルコを止めたのは巨大化したシェイドモン自身であった「ダメだー!」「ハルコ、ダメだよ、大事な思い出も消すなんて」。「思い出」として回想されるのは、かつて自分に向けられたマコトの温かい笑顔なのであった。「二人とも、お願い、ハルコを、ハルコを助けて!」この愛溢れる献身ぶり、泣ける。ハルコを操るのでなく、シェイドモン自身の決断であった。そのやさしさは、マコトも以前に感じていた、おそらくはハルコの本来持っていたやさしさに起因するのだろう。きらめいて散り、合体は解けた。そうされて初めて認められた「シェイドモン、ごめん、認めるわ、お前は私の心の一部、私の合わせ鏡。どんなに醜くても、ずっと一緒」。泣きながらシェイドモンを抱きしめるハルコ。通じ合えて、ほっとした。
●サニー:「俺は山田サニーじゃなくなり一人で生きていく」「どうしても生理的に受け付けない」「憑りつかれてる娘は気味悪いし、何より半分あの女の血が流れてるもんな」つまりは妻と娘に愛情などなく、結婚と出産は「理想の自分」になるための都合のいい手段でしかなかった。前回の感想に書いた恐ろしい技・フリーデスフォールを映像化するとそうなるか、お見事。クソ親父にお見舞いしちゃってください。そしてキョウの二発分の拳の重みを知れ!ボロボロになって、国民保護省送りが決定。この期に及んでも、娘に責任を押し付けようとしたクズ。化け物と叫んでも、パニックを脱したハルコはもはや哀れみのまなざしを向ける。ゴールドヌメモンと同じケースに入れられてたのは笑えた。まあ矯正は難しいでしょう。ただ私は、不幸な育ち方をしたACE当事者かもと思うと、気の毒ではある。一般論として犯罪者の一部は、そう育たざるを得なかった体験があるのだから、そこに目を向けなければ本当の矯正はあり得ない。なぜサニーがACE当事者と考えるかというと、虐待は親子で連鎖するから。皮肉にも「サニー」という明るい名前を付けた彼の保護者は、彼を虐待していたのではと推測する。でなければこんな外道は育たない。
●火野:情報屋として(人としても)マキより格下なのか、伽藍堂に呼び出されキョウに詰め寄られて情報を吐いた。
●イズミ:名乗っていない仮面の女がクレジットで名を明かすとはこれいかに?!誰デスか?仮面ということは、世間に顔が知れている有名な人物ということ。金髪に白いジャケット、黒と赤のワンピースというド派手な服装は我の強さ・大胆さを連想させる。「例のモノ」は「サポタマフェイク」偽造した身分証であった。サポタマフェイクを銃で一撃。ということは、代わりなどいくらでも作れるということか。サポタマフェイクを作れるのだから、お上と繋がりがあるのか?彼女も、連れがクーガモンというだけであの有名人・沢城キョウだと気づいた。後悔するぞと言い捨てて去った(キロプモンを力づくで奪おうとはしなかった)。CVは松嶌杏実さん。またも重要な役、おめでとうございます!サポタマとイズミが同じ声ということは、何か重要な意味があるんでしょうか、気になる。
●マフィア:全員、サングラスに黒ネクタイの制服。CVは橘内良平さん、中村光樹さん、長谷川禄さん、大我直輝(おおがなおき)さん(青ニプロのジュニア枠の方)。
●ハルコの母:ハルコを愛情をもって育ててはいたが、夫とは限界で離別(離婚もしくは別居)。右頬にあざがあるから、夫からDVを受けていたと思われる。離れてもハルコに手紙をよこしていたのも愛情がある証拠。ハルコが破滅しなかった一因は、母に愛されるという数少ない大事な体験があったから。エッグの外で、ハルコとうまく暮らせるといいな。CVは川庄(かわしょう)美雪さん。青ニプロ所属、東映アニメーション研究所(学校法人ではなく、東映アニメーションが現場の人材を育成していた機関。業界の変化とともに2011年閉所)卒。海外ドラマや洋画の吹き替えが主だが、テレビアニメやナレーションでも活動。活動は2004年から。
●ゴールドヌメモン:今回残念ながらセリフはなし。菊池さん、ビーブレへの出演がこれだけってわけないよね?!それではあまりに残念なのだ!最後に黄金チャーハンで笑いを取った。ところでその後は?どこへ連れていかれたのか。
次回予告:次回のサブタイトルは「黒い感情」。レアモンに武器を振るうムラサメモン、平然としたキョウの視線、謎のデジモン、叫ぶトモロウとその手の甲、おなかがどす黒くなって泣くゲッコーモンの顔アップ。ゲッコーモンの暗黒進化?なんか荒れそう。
2025.12.13. 記